物語

ミヒャエル・エンデ『モモ』 ミヒャエル・エンデ『モモ』

『モモ』の価値観を
大切にしたゲストハウス

『モモ』はドイツの作家ミヒャエル・エンデによって書かれた児童文学書です。モモという名のちょっと変わった少女が、時間泥棒から盗まれた時間を取り戻すこのお話。
一見子ども向けの冒険活劇に思えますが、「時間の在り方」について考えさせてくれる、とても奥深い物語です。

ゲストハウスの家主は、人生において大きな決断をするときに『モモ』を読み、深く勇気づけられました。
そのため、ゲストハウスを開くにあたって、この物語に流れる価値観をコンセプトにしようと考えたのです。

星
棚村華恵子「星の時間」 棚村華恵子「星の時間」 星 星 棚村華恵子「星の時間」

コンセプトを表現した絵
「星の時間」

『モモ』の価値観をコンセプトに置くことに決めた家主は、『モモ』をテーマにした絵をゲストハウスに飾ろうと思いつきます。

依頼したのは、画家の棚村華恵子さん。
繊細な筆致で抽象的なモチーフを表現する棚村さんの作風が、『モモ』にとてもよく合うと思ったのです。

「『モモ』をテーマに」とだけお願いして描いてもらった絵。
棚村さんが物語から切り取ったのは、モモが星々の時間の声を聞く、物語後半の重要なシーンでした。
光り輝く大地に立っている幸せそうなモモと、はるか遠くの星々から静かに聞こえてくる声。

青と黄色のコントラストがとても印象的な美しい絵、ゲストハウスのキーコンセプトとなる「星の時間」が生まれました。

星

「どこにもない家」の名前が
決まるまでのエピソード

ゲストハウスの名前を考えるにあたって、家主は『モモ』の中に出てくる「どこにもない家」にしようと思いました。
「どこにもない家」は、時間を司る場所として物語の中でもキーとなる家。
時間の在り方を大切にするゲストハウスには、とてもふさわしい名前のように思えたのです。

でも本の中に出てくる名前を勝手に使っても大丈夫なのでしょうか?
疑問に思った家主は色々な人に尋ねますが、なかなかはっきりとした答えが得られません。
ようやく行き着いた先が、『モモ』を発行している岩波書店さまでした。

試しに問い合わせてみたところ、
なんと、わざわざドイツにいるエンデのご遺族代理人に確認をとってもらえることになったのです。
とはいえ、相手側からすればリスクでしかない話。
名前を使う許可を出して悪いことをされたら、責任問題になりかねません。

家主はあまり期待をせずに返事を待つことにしました。
わざわざドイツまで連絡してもらえた、それだけで十分に幸せなことなのですから。

それからしばらくして、岩波書店さまを通じて代理人さまからの返信が届きます。

内容を簡単にまとめると以下の通りです。
・「どこにもない家」に対して著作権を持っているものではないので、 Yes, No を法的に唱える立場にはないと考えている
・その上で、我々としても「どこにもない家」が作者ミヒャエル・エンデと結びついていることが大変重要だと考える
・よって、ゲストハウスが『モモ』およびミヒャエル・エンデとつながっていることがわかるよう、ゲストの皆さんに色々な形で伝えてほしい

家主はもらったメールを何度も何度も読み返しました。

そして読めば読むほどに、このメッセージがまるでエンデ自身から送られてきたような、
そんな風に思えてうれしくなりました。

こうして、ゲストハウスの名前は「どこにもない家」に決まりました。